突然ですが、みなさんは溶接工について、どんなイメージを持っていますか?
顔を覆う防具のようなものをつけて、無言で火花を散らす職人。かっこいいけど、なんだか難しい資格がないとなれなさそう。そんな印象を持つ方も多いと思います。
今回は溶接の原理、溶接工になるために必要な資格、難易度などをくわしく解説します。金属加工には欠かせない溶接工。「資格を取って、手に職をつけたい」とお考えの方は必見です!
熱でくっつけるだけが溶接じゃない
溶接とは、2つの物質を熱などで溶かしてくっつけることをいいます。
最初に浮かぶイメージは、金属を熱で溶かすことによって接合する方法でしょう。これは「融接」と呼ばれる方法です。どうやって熱を発生させるかでさらに細かい分類があり、必要な資格も違ってくるので、のちほど解説します。
熱だけでなく圧力も用いる方法は「圧接」と呼ばれます。
接合させる素材ではなく、別の溶かした素材を間に入れて、のりのように用いてくっつけるのが「ろう接」です。耳慣れない言葉ですが、よく聞く「はんだ付け」はろう接の一種です。
初心者は「アーク溶接」か「ガス溶接」から始めるのがオススメ
溶接には融接、圧接、ろう接の3種類があります。溶接方法はさらに細かく分かれていきますが、ここでは代表的な方法として「アーク溶接」と「ガス溶接」をご紹介しましょう。
アーク溶接は、先ほど説明した融接の一種です。アークとは電気の放電現象(アーク放電)のことで、簡単に言えば火花です。アーク放電によって発生する熱を用いて金属を溶かし、結合部をくっつけます。電気を使うので「電気溶接」と呼ばれることもあります。
アーク溶接は、ほかの溶接方法に比べて溶接部が頑丈になるのがメリットです。また、風の影響を受けないので、屋外でも作業できます。厚みのある材質に向いた溶接方法です。
アーク溶接に必要な資格は「アーク溶接作業者」です。2日間で計11時間の学科講習と、1日約10時間の実技講習の、計3日間の講習を受講することで取得できます。テストはありません。
一方のガス溶接も、同じく融接です。可燃性ガスが燃焼するときの熱を利用して接合します。
アーク溶接と違って火花が飛び散ることはないため、溶接部を見ながら作業できます。ほかの溶接方法に比べて溶接するときの温度が低く、薄い材質に向いた溶接方法です。
ガス溶接に必要な資格は「ガス溶接技能者」です。2日間で計8時間の学科講習と計5時間の実技講習を受講します。アーク溶接に比べると講習時間は短いですが、学科講習の最後に行われる試験に合格しないといけません。
アーク溶接もガス溶接も、その気になればすぐに資格を取得できます。難易度もさほど高くないので、溶接ビギナーはこの2つのどちらかを取るのがオススメ。18歳以上なら、だれでも資格取得を目指せます。
奥深い溶接工の世界。ステップアップ資格もさまざま
アーク溶接やガス溶接を身につけた次の段階として、「アルミニウム溶接技能者」「溶接管理技術者」といった資格があります。
アルミニウム溶接技能者は、文字通りアルミニウムの溶接をするための技術資格で、専用の機材や技術が扱えることを証明する一段上の資格です。
溶接管理技術者は溶接だけでなく、施工計画や管理に関わる仕事もできることを証明する資格です。管理職や責任者のポジションを目指す人は挑戦してみるといいでしょう。
ほかにも、実務経験必須の「ボイラー溶接士」や「ガス溶接作業主任者」、指導者資格である「溶接作業指導者」など、溶接にはさらなるステップアップ資格があります。
アルミニウム溶接などは機械化がとても難しいと言われ、職人が求められています。技術職としてのキャリアを積む先の選択肢として、溶接工を検討してみてはいかがでしょうか。